企業経営において、パーパスが重要視されるようになった背景を理解しましょう。ボストン コンサルティング グループ [2021]が挙げた4つのパラダイムシフトが起こっています。
企業目標:財務的利益から社会的利益へ
企業が長期的な目線と社会的な観点で取り組んでいく「サステナビリティ経営」が注目されています。これは、企業が社会における存在や姿勢を再定義し、社内外のステークホルダーへの共感を生み出すことが求められているからです。名和(2021)は、経済的課題が頻出する現在を資本主義から「志本主義」への移行期と捉え、人的資産を基軸とした「パーパス経営」の重要性を掲げています。
パーパス経営は、企業が持つべき理念や目的を明確にし、それを従業員や顧客に伝えることで、企業の成長につなげる経営手法です。例えば、「環境にやさしい製品を作ることで、環境保護に貢献すること」がパーパスになります。パーパスを持つことで、企業は社会に貢献することが目的であることを明確にし、社員たちは仕事に取り組むモチベーションを高め、顧客からの信頼も高めることができます。
戦略策定:先を読むことから先が読めないことを前提にした経営へ
企業の事業展開に大きな影響を与えるVUCA(Volatility・Uncertainty・Complexity・Ambiguity)という言葉があります。戦争や感染症の流行など、予測が難しい状況が起こることがあるため、企業は柔軟に対応する必要があります。森 [2020]によると、テクノロジーの発展によって、企業と顧客の関係性に変化が起きています。
今では、ユーザー同士がダイレクトに繋がり、スマホやIoTデバイスを介して常に企業にフィードバックが送られ、インフルエンサーの台頭でエモーショナルなつながりが生まれています。企業は、これらの変化に対応し、顧客とのつながりをより強固にするために、適切な戦略を立てる必要があります。
組織:決めたことを実現する集団から付加価値を追求する集団へ
企業は、顧客が求める価値を柔軟に考え、提案できることが重要になっています。つまり、顧客ニーズに合わせた製品やサービスを提供するだけでなく、それ以上の価値を提供することが求められています。このような顧客志向のアプローチは、競争が激化するビジネス環境において、企業にとって不可欠な要素となっています。
また、鈴木 [2022]は、企業にとって従業員教育が重要であることを示しています。従業員教育は、生産性向上やサービス品質の向上など、企業の成長に直結する重要な要素です。さらに、鈴木は、従業員教育がパーパスの実践やコンプライアンス意識を高めることができることを示しています。従業員が企業のパーパスを理解し、それを実践することで、企業は社会的存在意義を高めることができます。
人材マネジメント:企業に即した人材マネジメントから変化に対応する人材マネジメントへ
物質的な飽和状態に達しつつある現代では、企業は事業領域の変化や多様化に対応する人材を確保する必要があります。特に、ミレニアル世代やZ世代は、ジェンダー問題や気候変動、格差問題などの社会課題への関心が高いため、企業の社会的な存在価値を明確に発信し、共感・共鳴を生み出すことが消費面、雇用面いずれにおいても必要となってきます。
丹羽[2018]は、企業の役員であるChief Happiness Officer(CHO)として、人生においてパーパスを持つことが幸せをもたらすと指摘しています。企業は、リクルーティングやブランディング、マーケティングの方法を見直し、社員が幸福でやりがいを持って働ける環境を整えることが求められています。
CHOは、社員がパーパスを持ち、そのパーパスに沿って働けるようにサポートすることが仕事です。企業にとって、社員の幸福は重要な要素であり、パーパスを明確にすることで、社員たちは自分たちの役割や目標について理解を深め、より一生懸命働くことができるでしょう。企業にとって、パーパスを持つことは、成功するために不可欠な要素です。
まとめ
これらのパラダイムシフトを踏まえた上で、企業が顧客や従業員に対して責任を持つことが重要であることが理解できます。例えば、企業は環境に配慮した取り組みを行うことによって、より持続可能なビジネスを展開することができます。
また、企業は社会的責任を果たすことで、社会的信頼性を高めることができます。
これに加えて、企業はパーパスを明確にすることで、従業員や顧客との共感を生み出すことができます。このような共感に基づいたビジネスは、競合他社に比べて優位性を持つことができます。