パーパスは制定でも開発でもなく、発見するものである:『パーパス・ドリブンな組織のつくり方 発見・共鳴・実装で会社を変える』より【パーパス作成特集②】

パーパスは制定でも開発でもなく、発見するものである:『パーパス・ドリブンな組織のつくり方 発見・共鳴・実装で会社を変える』

本書では、パーパスが求められている時代背景を踏まえ、パーパスの発見、共鳴、実装について実践的知見がまとめられている。

著:永井 恒男, 著:後藤 照典
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中でも「パーパスは発見されるもの」という主張に焦点を当てて紹介していきたい。

あなたの会社のパーパスはすでに存在している

パーパスとは、自分たちらしさが凝縮され、かつ社会性を含み、社内外に共鳴を生み、目指す世界の実現に向かうためにエネルギーを生み出すためのものである。

そのため、パーパスはゼロから作り出すものではなく、すでに存在しているが言語化、ビジュアル化がなされていないものであると言える。

パーパス発見のポイントとステップ

①アイデンティティを見出す

原点、歴史

創業者、創業メンバーにインタビューを行い、創業当初を振り返ることからはじめる。社史が編纂されているのであれば、それを読み込み、自社がどのような過去を歩んできたのかを確認する。

自社の現状

自社の現状を振り返る。

  • ハード面
    • 戦略
    • 事業内容
    • 業務プロセス
  • ソフト面
    • 社員のスキル
    • 組織風土

これらに対して、誇らしい現状(プラス面)と残念な現状(マイナス面)を分けて見ていく。残念な面にも注目することで、「どんな価値観・強みが発揮されていないのか」に気づくことができる。

具体的事例・結果

自社を代表する事業、象徴的なプロジェクトのストーリーの中には、自社の価値観や強み、らしさが現れている。

  • 何が顧客に評価されたのか
  • 自社のどんな価値観、強み、らしさが成功要因になったか

失敗したプロジェクトについても、実現したかった姿や挽回しようと動いた時に働いていたものに注目する。

ステークホルダー(顧客、パートナー)

  • 顧客
  • 取引先
  • 自社地域の住民

などに、客観的に言及してもらう。社員では気づかなかった価値観、強み、らしさを聞き出すことができるかもしれない。

構成員の想い、特徴

社員の日々の言動の中に、価値観、強み、らしさが現れていることがある。それを分析し、会社全体の特徴に落とし込んでみる。

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②世界の根源的ニーズを考える

次に、世界は本質的に何を求めているのか?を考える。

自社を取り巻く時代、世界で起こっている出来事

  • Society: 社会
  • Technology: 技術
  • Economics: 経済
  • Environment: 環境
  • Politics: 政治

のSTEEPというマクロな視点で見てみる。
現在だけでなく、5年後、10年後にどうなっているかについても分析する。

社会や世界が求めるニーズの探求

世界は「どのような状態が実現されていることを望んでいるか」を考える。「幸せ」「平和」といった抽象的な言葉から、自社ならではの視点で噛み砕き具体的にしていく。「幸せとは何を指すのか?幸せのために大切なことは何か?」といった具合である。

③自社と世界の接点を考える

①と②から見えたことを「自社はステークホルダーや世界にどんな価値提供をしているのか、していきたいのか」という視点でまとめていく。

この段階では、「こんなの夢物語だ」とか「実現は難しい」と考えず、最大限の可能性を想像することが大事である。イメージを膨らませることで、実現のアイデアが湧いてくるためだ。

ミツカングループの「未来ビジョン宣言」

若手経営幹部8名と中埜会長で3つの方針を据えて策定にあたった。

  • ミツカングループの原点重視
    • 「買う身になって まごころこめて よい品を」
      『脚下照顧に基づく現状否認の実行』
      『やがて、いのちに変わるもの。』
      これらを中心に検討を進めた。
  • 10年先の未来の環境分析
    • 気候変動、人工、農業、食品、技術革新、デジタル化の研究者、ベンチャー企業の経営者、NPO参画者に話を聞き、幅広い分野で議論を重ねた。
  • 9人のメンバーで活発に議論する
    • 外部のコンサルタントに任せず、メンバーたち自身で考えて形にするプロセスをとった。

結果、「新しいおいしさで変えていく社会」を目指し、おいしさと健康を一致させた商品を世界に提供する取り組みをしている。

④パーパスの言葉を考える

What,HowからWhyを導き出すイメージ。適切な抽象度に着地させることが重要。

自社らしい手段
× 
対象
× 
対象の状態/自社の貢献
(どうなっている・何をする)

という形をとるようにする。

引用 – 99p

このような形で「これだ!」と思えるものを発見していく。一つに絞れない場合は、評価軸に基づいて絞り込みを行う。

  • シンプルかどうか
  • 信じられるかどうか
  • エネルギーと方向性を与えるか
  • 自社ならではのものか

また、絞り込みができてきたら、メタファーを利用した言い換えができないかを検討することも有効。

例えば、自社の価値提供はどんなものか、という議論のなかで、「心のコップに水を注ぐようなイメージだ」という意見が出たとする。パーパス案が「子どもたちに喜びを提供する」だとしたら、「子どもたちを喜びで満たします」という表現にすれば、より共感を生みやすいかもしれない。

最終的には、パーパス+補足文章の形でまとめるとよい。

パーパス発見のエコロジーチェック

パーパスの明文化において、「エコロジーチェック(環境点検)」の視点も重要である。これはコーチングの分野で「クライアントが行う新たな挑戦について、自分の周囲の影響を調査し、健全性を保つこと」の意味で用いられる。

これが発見の次のステップである「共鳴」と「実装」に重要な意味を持つ。

エコロジーチェックポイント

  • ワクワクする内容になっているか
  • 「自社ならでは」の社会的価値を盛り込めているか
  • 10年以上継続できるものか
  • 経営を維持できるものか(売上につながるか)

おわりに

「なぜパーパスを発見しようと考えたのか」を忘れずに、以上のプロセスをたどっていくことが重要である。

参考文献

永井恒男,後藤照典 [2021]『パーパス・ドリブンな組織のつくり方 発見・共鳴・実装で会社を変える』日本能率協会マネジメントセンター

著:永井 恒男, 著:後藤 照典
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